2020/08/21 12:17

by シュウ(G.T.D./Balladmen)


2020年の8月、ex-Littersのカナ氏率いるVindictivesの3曲入りCDがリリースされた。

Elmoc、Litters、そしてVindictivesと、友人としてカナ氏のバンド遍歴を追ってきたが、これまでで最もパンク度、テンションが高く、キャリアからは想像し難いそのサウンドにいささか驚いてしまった。 コロナ禍で誰もが思うように活動できない状況下ではあるが、話を聞く限り彼女らは状況をものともせず、音楽を楽しんでいるようで頼もしい。 そんな彼女らの最初のアクションとしてのリリース、バンド結成までの経緯、そしてこれからについて聞いてみようと思う。

シュウ:LittersはThree Minute Movieとのスプリット音源のリリースや、リリースに伴う各地でのライブなど、活動が波に乗ってきたところでいきなり解散した印象です。自分も含めびっくりした方も多いと思うのですが、その辺り、どんな心境の変化があったのでしょうか? カナ:自分で始めた初めてのバンドが初めて解散したので思うところはあったけど、対人間とか曲作りで起こりうる問題ももちろん起きたし、このまま続けたい?と自分に聞いたら解散!の一択でした。なのでここでは、最高だったぜ!の一言で良いかと思います。メンバーは今でも大好きだしLittersをやっていなければVndictivesは生まれなかったと思うし。 シュウ:なるほどです。ではVindictivesが結成されるまでの流れについて聞かせてもらえますか? カナ:結成の経緯ですが、チャンメイは5年前桃太郎ずしでコマネチしてるポテンシャルの高い女子がいるなという印象で、そこから同じライブとかで会っていくうちに友達になりました。話すうちにとても人間としても魅力的な子だな、音楽も大好きで、バンドやればいいのに。とずっと思ってました。後にバンドを組んだらこうしたいという話で盛り上がり、彼女の親友を連れてきてくれたんですが、それがボーカルのやかもです。二人は16歳から名古屋のシーンで悪い大人たちにかっこいい音楽を教えてもらったり、それは濃厚な10代を過ごしたそうな。聞くエピソードが全部面白いんです。そして、同時に、最高にかっこよくて、バンドやらなきゃいけない子が1人いる!って事で連れてきてくれたのがあゆみちゃんでした。沖縄から出てきた負けん気の強い子でした。その時、誰がなにをやるかなんて全く決まってなかったんですけどね(笑)。そして、飲みながらそのままスタジオに入りました。


シュウ:Littersには無かった勢いがVindictivesには感じられて、リリースインフォなんか読んでてもワクワクします。その経緯を聞いて納得ですね。で、メンバーの共通目標?としてThe Slitsの名前を挙げてますが、やっぱり聴く音楽なんかもVindictivesを作っていく中で変化していったんですかね? カナ:スリッツの楽曲も好きだけど、それこそその態度に、四人共に共感したので名前を出しました。彼女達はこう言いたかったんだと思うとか、結成した時沢山話しました。思いつけば、これ聞いてみてや!みたいな沢山のやりとりの中でギターのチャンメイが挙げたDog Faced Harmansとかも衝撃的でした。 シュウ:バンドを始めるとき特有の楽しそうな雰囲気が伝わってきますね。スリッツ以外にもCDのインフォには、影響を受けたパンクバンドの名前がずらっと並んでますが、パンク以外で影響を受けたバンド、音楽はあります? カナ:私はビートルズもブリットポップも好きだし、あゆみちゃんは前のバンドの趣向がフォーク、アイリッシュ、ラスティックだったのでザ・ポーグスに影響を受けたし、チャンメイは待ち受けがパティスミスだからロック全般かなりきいてるのかと。あれ?でも全部根本にパンクのにおいがする気がする。やかもは昭和歌謡です。

シュウ:パンクフィルター通した耳で色々聞いてる感じですかね?だったらめちゃ共感です。 CDを聴かせてもらって、やかもさんの歌に力が有るなと感じたのですが、それは昭和歌謡の影響だったりするんですかね?また、歌詞も彼女が?詞は載ってませんが、"Template Girl"という言葉に惹き付けられます。差し支えなければ軽くその内容にも触れていただきたいです。 カナ:やかもの歌声の力強さは私も好き。昭和歌謡とハードコアパンクの影響かと思います。あとはいつも気が狂ったようにずーっと喋ってるから喉強いんじゃないですかね。歌詞は一曲づつ全員が担当してます。"Template Girl"はスリッツの"Typical girls"へのアンサーです。量産型の物に対しての皮肉で、私達なりに解釈してちょっと口が悪くなったバージョンです。 シュウ:パンクソングの普遍的なテーマですね。どんな表現で歌っているのか興味津々です。 あと、CDは色々とこだわりが垣間見えますが、SE的に使われているヒッチコックの"鳥"ですかね、どんな意味が込められているんでしょう?個人的にヒッチコック大好きなので、再生ボタンを押した瞬間興奮しました(笑) カナ:本当はヒッチコックの言葉の"Revenge is sweet and not fattening"の台詞を使いたかったんですが皆で英語のインタビューせっせと聞いたりして探しても見つからないままでどうしようかと考えたところ、中止した自主企画のフライヤーに鳥のコラージュを使用したので頭にあったのと、鳥の大群の音が怪しい且つ復讐感と何の鳴き声かよくわからない感じが気に入って、使いました。復讐=Revenge=Vindictiveなので。とにかく曲の中身と相性が良かったんです。

シュウ:バンドの雰囲気と合ってていいですね。緊張感を助長してて惹き込まれます。そういった点までメンバーと共有できてるところも素敵ですよね。皆さんそれぞれ、音楽以外、映画等のカルチャー的なものにも興味があったりするんです? カナ:メンバーでお互い面白かったものなんかを勧めあったりして共有する事はとても多いです。好きな映画を答えるのは難しいですねぇ。チャンメイとか特に大変なのでは?ヒッチコックのアイデアもチャンです。彼女に聞いたら、昔は監督や俳優が気に入れば出てるもの全部観てました。今はなんでもフラットに観れるようになって、昔よりも固執はしていないです。絞るならデビッドフィンチャーと伊丹十三の作品が好きです。でも最近A24の作品のエンディングの曲にもってかれて、メンバーに曲薦めちゃったり、エディットピアフ感動しすぎて2度連続で観たり、こだわりがあるのか自分でもわかりません。とのこと。メンバー惚気けがはいるのですが、チャンは洞察力が鋭くて物事の意味合いを理解して映画や音楽を人一倍噛み締めてるから、でてくるものがいつも面白い。あと、Tシャツの絵も書いてくれたんですが、かなりいい物になりました。 私はアメリカン・ニューシネマの絶望と無情とピュアな若者の気持ちを描いたものに影響を受けました。その中の音楽も好きです。あとは手塚治虫作品ですね!あゆみちゃんは映画はスタンド・バイ・ミー。あと、怪奇漫画と猫です。あゆみちゃんと飲み明かした時に、10代の頃スケボーに明け暮れていて、見狂っていたDVDの中でザ・サウンドとかストゥージズを知ったんだって話も胸熱でした。 やかもは物心着いた時から観ていたアダムスファミリーとジャイアントピーチがルーツだそうです。 虫とかにも話しかける優しい所はそこからきてるのかと。 かなりのファッション狂いでもあって、お洒落なとこも好き。ジャケのデザインとか色々やってくれました。 シュウ:良い単語が色々と出てきましたね!そういった音楽以外への興味が作る音楽に深みを与えるんではなかろうかと勝手に思ってます。そのうちそれらを肴に呑みたいものです。 それでは、最後に未来について伺いたいと思います。コロナ禍で先が見えず計画も建てづらい状況だと思いますが、今後はどんなふうに活動していく予定ですか? カナ:まず自主企画のリベンジ。あと海外の大好きなバンドを呼んだり、またあるバンドとスプリット出したいとか勝手に話は盛り上がっているので、やりたい事は渋滞中です。自分たちは友達としても楽しくやってきたメンバーだから、遊びの延長で最高な事が出来ていると思っています。これから4人でかっこいいものを作っていきたいです。