2020/08/28 17:57

by シュウ(G.T.D./Balladmen)


初めてマンホールの音楽に触れたのは3年くらい前の事だったか。これほどまでにブルースをパンキッシュに鳴らすバンドを僕は体験したことが無かった。それ以来僕は彼らに魅せられてしまい、今日に至るまで何度もライブに足を運び、度々バンドで共演させていただいた。

その間繰り返し耳にし、そらで覚えた名曲の数々が3rdアルバム「BLUES宣言」として発売されることとなった。

さっそく入手し、再生するとスピーカーから飛び出したのはライブハウスのままのマンホールであった。「これが全て、以上!」と言わんばかりにシンプルに詰まった作品。言葉が不要なのは言うまでもなし。

ただ少しだけ突っ込んでみることで、そのバッグラウンドと人柄に触れていただきたいと思う。それもまた彼らの魅力のひとつである。

そういう訳で今回はマンホールの中心人物、ボーカル・ギターの久家氏にインタビューを行ってみた。

シュウ:6年ぶりのアルバム、「BLUES宣言」の発売おめでとうございます。とても素晴らしい作品で、届いたその日から連日愛聴させてもらってます。最初に聴いた印象ですが、ずいぶんシンプルに絞ったなと思いました。やはり今回はその辺りに拘ったんですかね?


クヤ:えっと、今まで出したアルバムの反省点を踏まえて、 1stの色んな楽器を入れたり、2ndの普段ライブでやらない曲調の曲を入れるというスタジオ録音のよくある手本に囚われないで、いつものライブみたいな感じで、歌以外は全部一発録りでやりたかったので、ライブ盤みたいなスタジオ録音アルバムにしたかった。

だってコーラス以外何も重ねてないもん、ギターなんてバッキングとか弾いてそのままソロ弾いてまたバッキングに戻るという、しかもワンテイク(笑)


シュウ:随分潔いですね(笑) 今のマンホールをそのまま音源にしたみたいなアルバムですよね。聴いていて情景が浮かびます。曲も近頃のライブでお馴染みものが多く、僕がライブで聴いて一発で好きになった「オンボロバス」も収録されていて嬉しかったです。あの曲はキャプテン・ビーフハートなんかの影響が垣間見える気がするのですが、「オンボロバス」の曲や歌詞について教えてもらえませんか?


クヤ:曲を作った時の事をあまり覚えてないけど、多分、ハウリン・ウルフの曲のリフを真似してたら出来たのかな、ビーフハートはその時は意識してなかったけど、ビーフハートのあるライブ盤を聴いたら同じようなリフでワンコードの曲があったから、まぁ影響受けたのが一緒だからまぁいいや(笑)と思った、演奏に関しては坂口にも林にも好きなようにやってくれとしか言ってない、たまたまビーフハートぽくなったのかな?

歌詞は説明するも何もそのままの事を歌ってる、オンボロバスであてもない旅をしたいよなぁという(笑)


シュウ:ワンコード・ブルース最高ですね!僕もハウリンウルフやビーフハートのワンコードは大好きです。

林さんのことはあまりよく知らないんですけど、坂口さんはロックやブルース以外にも色々聴くみたいで、ちらちらそれが覗くからバンドに面白味を加えてて最高です。

僕はくやさんの書く歌詞が好きなんですよ。何というか、ピースが全然足りてない穴だらけのパズルみたいで(笑)。その穴が聴いてるこちらの想像を掻き立てる「魅力」なんですけど、分かってもらえますかね?(笑)


クヤ:ありがとうございます、ピースが足りないパズルって言葉足らずなのかな(笑)

でも俺は説明みたいな歌詞が嫌いで、村八分のチャーボみたいな俳句や川柳みたいな歌詞や冨士夫さんや耕さんみたいな、難しい言葉や長々とした説明のない、普段話してる言葉を歌う人が好きでめちゃくちゃ影響受けた、何を歌ってるかじゃなくて、どう歌ってるかに影響受けた。

後、俺が歌詞を書く時は言葉を足すのではなくて、いかに言葉を削る事に気を使ってる。足りない部分が想像力を増すというか聞いてる人の思い入れが入る隙間が増すというか。

シュウ:全く共感ですね。歌詞でも映画でも想像する余地が聴いたり観たりしている方は楽しい。「夕方電気」とか「どんくらい」とか、それだけじゃないけど色々と考えてしまいます。


で、アルバムの歌詞以外の部分についてですが、「Blues宣言」とは思い切りましたね。しかもブルースが好きなのは聴いていて伝わるけど、所謂ありがちな、普通のブルースをやろうとしている感じが全然ない。このタイトルには何か意図があったんですか?


クヤ:アルバムタイトルにしたのは、この曲が1番アルバムを表してるからかな。この曲を作った時も普通のブルース調の曲でブルースが最高と言っても説得力ないしダサい。めちゃくちゃ速くてハードな曲でブルースが最高と叫ぶ事でブルースは音のジャンルじゃなくてもっと表現する時の根底の繋がりを表すと思ったから。

でもブルース宣言は、ある年の大晦日に独りで大和町のスタジオでどれくらい泥酔したら演奏出来なくなるのかを試したくて個人練習に入った時にたまたま出来た曲だけど、だから意図なんかないのかも(笑)


シュウ:何でそれを試したんですかね(笑)

でも、良いですね、かっこいいです。自分が子供の頃のブルースのイメージって、お手本通りに正しくやるのが良しとされる退屈な音楽って感じだったのですが、真逆ですね。

それは最初のアルバム制作の話、「スタジオ録音のよくある手本に囚われないで…」ってのにも繋がると思うのですが、やはりクヤさんの中で「当たり前になっていること」への反発心だったり、他人と違うことをやることは楽しみだったりするんですかね?


クヤ:当たり前になってる事の反発心はあるかも、他人と違う事をする楽しみもある、でも他人よりもまず自分自身が固定概念に縛られているから、俺はとても常識的な人間だから(笑)それを壊さないと面白くない、それはめちゃくちゃな事をするんじゃなくて自由になりたいから、自由になりたいと思ってるうちは自由じゃないけど…


シュウ:それをブルースでやろうとしてるのが面白いですね。ぱっと見、ブルースなんてルールだらけのつまらない音楽じゃないですか(笑)でも聴けば聴くほど、あのシンプルな作りの中に自由が詰まっているっていう。なんかけなしちゃってるようですが、俺もブルースは大好きなんです。


ところでクヤさんはブルースならどの辺りが好きなんですか?


クヤ:好きなブルース!多過ぎてキリがないです、持ってる音源の多さで言うと、ジョンリー、ライトニン、ウルフ、マディ、ジミーリード、エルモア、サニーボーイII世、マジックサム、アルバートキング、リトルウォルター 、、、スリムハーポやライトニンスリムやレイジーレスターみたいなルイジアナブルースやニューオリンズもあるし、戦前ブルースなんてもうあげていったらキリがない(笑)

ただこういう黒人のブルースが好きだけど、ブルースと同じ匂いというか質感、猥雑で原始的な、ヴェルヴェッだったりストゥージズだったりMC5だったりドールズだったり、ブルーチアーや勿論ビーフハートも、それも完全に黒人のブルースと同じ感覚で好き。

あっ、好きなブルース、ロバート・ナイト・ホークとハウンドドッグ・テイラーとRLバーンサイドとジュニア・キンブロウとフレッド・マクダウェルもだ!(笑)


シュウ:質問がザックリ過ぎましたね(笑)まあ、どんくらい好きなのか読んでる人には少し伝わったんじゃないでしょうか(笑)

俺も上記のバンド、アーティストはほぼ大好きですね。「猥雑で原始的」ってのが最高です。完成度が高過ぎる、洗練されたバンドにはあまり魅力を感じなくなりました。そして俺は今まさにフレッド・マクダウェルを聴いてます。


そういった音楽がコンセプトになっているようなバンドって、周りを見渡すと余りいないように思いますが、音楽的に共鳴するバンドっていますか?ボロキチとか?


クヤ:ボロキチは凄い好きだし共鳴する部分があるけど、一緒に対バンするといい意味で全然違うなぁと思ったりします(笑)

対バンしたりライブを観に行くバンド、好きなバンドは沢山いるけど、凄く共鳴するバンドはいないかな、部分部分で共鳴したり、影響受けたりはしてるけど、Balladmenとかルーツが共通してる部分が沢山あるけど、鳴らし方が違うよね、Balladmenはクールに熱い、俺らはただやみくもに暑苦しい(笑)


シュウ:おお、ありがとうございます(笑)

やみくもっていうか、ひたむきな感じはしますよね。で、クヤさんが熱くやってる隣りで坂口さんが苦笑いしながら物凄いギターを炸裂させている絵が好きです(笑)

完全に共鳴ってのもなかなかないですよね。マンホールもボロキチも群れない感じがクールで、それもまた魅力の1つです。

クヤ:ありがとうございます!

シーンとか棲み分けとか俺はあまり興味ないです。


シュウ:なさそうですね(笑)

話変わりますが、今後の予定とかってありますか?アルバム出たばかりですが。


クヤ:何もないです(笑)

当分ライブもやれないと思うし、だからライブの代わりにマンホールの新譜「BLUES宣言」を聴いてください!

よろしくお願いします!


シュウ:ありがとうございました!