2020/09/05 22:38
by シュウ(G.T.D./Balladmen)
今回は久家氏/マンホールに引き続きそのギタリスト、坂口貴満氏へインタビューを行った。
久家氏が熱く歌っている隣りで苦笑いしながら物凄いギターを炸裂させている、あの男である。
久家氏の作るブルースをロックンロールたらしめるのは彼のギターによるところが大きいと私は思う。
その個性と普遍性が交差するプレイのルーツを探るべく、普段は無口な彼に少しだけ話を聞いてみると…やはり口下手な彼、時折脱線しながらも、なかなか興味深い話が引き出せたかと思います。

シュウ:新しいアルバム「BLUES宣言」聴かせてもらいました。今回は随分シンプルに絞り込んだサウンドですね。ライブみたいに生々しくて好きです。
アルバム3枚を聴き比べてみると、3枚とも理想とするサウンドが違うように思うのですが、いつもテーマみたいなものを設けているんですかね?坂口さん的に今回はどんな感じでいこうとしたんですか?これはよく似たことをクヤさんにも質問しましたが。
坂口:正直全く考えてなかったです。けっこう急だったりしたので。あ、ひとつだけ!シンプルにやりたかった!SAXをフリーキーに重ねたら?とかあったけど、今回あまりやりたくなかったです。あ、その辺は久家と一緒?かな。
シュウ:1stアルバム「Boogie Out」ではサックスやピアノをプレイされてますもんね。
僕はライブを観てからの、1stだったのですが、いきなり1曲目のフリージャズみたいなアプローチに腰を抜かしました。同時にマンホールの懐の深さを垣間見たのですが、今回はその辺りを掘り下げてみたいと思っています。
坂口さんがピアノやサックスを演奏するのってやっぱりジャズからの興味だったんですかね?噂ではピアノやるために上京したとか?
坂口:そうです、お金貯めて音楽の専門学校で3年サボりながら通いました。きっかけは知り合いのお姉さんが誕生日にくれたレオン・ラッセルのチケットでした泣衝撃でしたレオン・ラッセル。
で、学校の先生がファッツ・ウォラーとかアート・テイタムとかを弾いてくれて、ここでも衝撃でした。そっからジャズに入っていった感じかな。
最近はシュウ君に色々教えてもらってるよね。
シュウ:僕もジャズは好きですがその時期のものはサラッとしか聴いてないですね。スウィングの時代ですよね。他どんなプレイヤーが好きだったりします?
坂口:他は大好きなエリック・ドルフィー にチャールズ・ミンガス 、ジョン・コルトレーン、この辺りはシュウ君と一緒だね。まだまだいっぱいあるけど。
マンホールの1stの「バス停のブライアン」のアウトロ手前でギターとユニゾンでコルトレーンのフレーズを少しパクッて吹いてます(笑)
そんな「Boogie Out」も絶賛発売中です(笑)
シュウ:「Boogie Out」も名盤ですね!「BLUES宣言」とは正反対の主張、トランペット、サックス、ピアノなんか使ってたりして、ライブとの違いが面白かったりするんですよ。
好きなジャズ・プレイヤーについてはなるほどです。その辺りの影響って、やっぱりギターにも反映されていますよね。僕は個人的に坂口さんとスタジオなんか入って、スウィングっぽい曲なんかやると、ジャズっぽいフレーズを乗っけたりするじゃないですか。それ聴いてやっぱマンホールすげえなって思ってました。

坂口:(笑)おー、そう言ってもらえてめちゃ嬉しい。今回のシュウ君の音源だけつくってリリースしていくバンドに参加できてめちゃ嬉しいよ!The Wrongman絶賛練習中(笑)
色んなやり方あっていいよね。自分も色々試したい。
逆に質問でBalladmen ってバンド名はやっぱりディランの影響から?
シュウ:僕に質問ですか?!そうですね、バンド名考えているときにディランの「Highway 61」のLP眺めてて、"Ballad of a Thin Man"見てピンときました。特別に好きな曲ってわけでもないのですが。気障な感じが馬鹿っぽくて気に入ってます。
ディランといえば坂口さんも好きでしたよね?
やっぱジャズ以外でもブルース、R&Bとかフォークとか、その辺りからうまれたロックなんかも聴きます?
坂口:ジャズ以外も色々好きです。ディランも大好き。今年(来日公演中止)残念だったねー。
あと意外って言われた事あるのが、ブルーハーツ、マーシーも大好きです。学生の時に夕方やってた音楽番組のブルーハーツのPV観てショックを受け、次の日どうしても欲しくて1stは万引きしてしまいました。。ごめんなさい。
シュウ:(笑)ブルーハーツは意外ですね。
そう言えば"手に入れろ"のアウトロの奇天烈なギターがかっこいいなって思ってて、僕は勝手にマーク・リボーとか想像してたのですが、坂口さんは「ビートルズだ」って言ってましたよね。
坂口さんがギターを弾く上で影響を受けた、意識してるギタリストとかあれば教えてもらえますか?

坂口:さすが!(笑)あれをカッコイイって言ってくれたのはシュウ君だけです。あそこはビートルズのテープ逆回転的な感じなんやけど…今度ライブでイマジンしてみてください。
もちろんマーク・リボーやロバート・クワインも大好きですが、凄く影響受けたのがThe Grooversの藤井一彦さん。Heatwaveの山口洋さんです。このアルバム録音する頃もHeatwaveを聴いて気合い入れてました(笑)ヴォーカルギターの人の弾くギターがどっちかというと好みかも!
シュウ:へー、そのバンド聴いたことないので今度聴いてみます。いろんな影響が重なってて面白いですね。また聴こえ方が変わってきそうです。
では最後に音楽以外で好きなことってあれば教えてもらえますか?
坂口:他に好きな事といえば、うちの猫とダラダラ過ごす事!最近行けてないけど映画も、本も近年よく読むように。あとは神保町ブラブラする事が、たまの休みのジジイの楽しみです。

映画で好きなのはアキカウリスマキの不器用な人達の映画は好き。最近読んだ本でよかったのは若松英輔さんの、「弱さのちから」と、つい最近読み直したのが「九月東京の路上で」1923年関東大震災で起こった朝鮮人虐殺の歴史ノンフィクション。
シュウ:趣味がかぶりますね(笑)僕も神保町の散歩とアキ・カウリスマキは大好きで、「真夜中の虹」とか「コントラクトキラー」…
坂口:「街の明かり」「パラダイスの夕暮れ」「浮き雲」やら、、あ、だめだ全部だ。
シュウ:不器用な人間を描くのが上手いですよね。普段の生活で目立たないような人物ばかり取り上げてドラマを炙り出すみたいな。
坂口:うん、そだね。自分もかなり不器用だし!!人付き合いかなり苦手!!
シュウ:はい、インタビューからもひしひし伝わります(笑)
あと、僕も今度「九月東京の路上で」読んでみますよ。その事件、僕の好きな作家とかもどさくさで不当に殺されたりしてて興味あるんです。
坂口:そうそう、いろんな作家とかこの頃の事書いてるよね。今度貸すよ!
シュウ:ありがとうございました!