2020/09/18 13:29
by シュウ(G.T.D./Balladmen)
今回は1999年から東京にて活動を続けるThree Minute Movieのメインマン、渡辺尚史氏にインタビューを試みた。彼らは20年以上に及ぶ活動の中で、メンバーチェンジを繰り返しながらも6枚のフルアルバムを始め、その他多くのシングルやスプリット作品を残し、全国各地でライブ活動を続けている。去るもの追わず、じっと前を見据え、マイペースに。それはまるで淡々と焼酎を呑み、急に落ちたと思ったら、ガバッと目覚め、周囲を気にせず、また淡々と呑み始める渡辺氏自身の「酒の呑み方」のようでもある。そしてまた、終始一貫される彼の音楽性、いわば彼の音楽は渡辺氏(以下ナベ)の人生そのものではないだろうか(ほんとに!?)…そんな彼の作る3MMの音楽や詞の世界を少しだけ覗いてみようと思う。

シュウ:さてさて、コロナウイルスの影響でなかなか思うように活動できない今日この頃かと思いますが、最近はどんなふうに過ごされてます?
ナベ:あまり出歩いてないですね。
もっぱら家呑みで、ツマミを作ったり、料理するのが楽しいです。仕事中に今夜のツマミは何にしようかとか、メニューを考えたり。
いつもビールから焼酎の流れで組み立ててます。あと禁煙に挑戦中です。まだ3日目ですが。
シュウ:おお、のんびりしてますね。禁煙頑張ってください。バンドの方は?
ナベ:バンドの近況は、今年の1月には決まっていた事なんだけど、ドラムの梶原くんが脱退しました。
いま新しいメンバーとスタジオに入っていて、
立て直してる最中です。
8月まで決まっていたライブは梶原くんに叩いてもらう予定だったんだけど、この状況でキャンセルになってしまって。
シュウ:噂には聞いてました。梶原さんのことは残念ですが、すぐ新しいメンバー見つかったんですね。どんな感じです?ドラマーが変わって。
ナベ:まあ、新曲も出来てるし楽しくやってます。
ただ、まだ4人揃ってスタジオに入れてないので、早く全員揃ってスタジオに入りたいですね。その辺はメンバー各自の考え、家庭や仕事の事情など色々あるから焦らずにゆっくり進めていけたら良いかなと思ってる。
しばらくはスタジオに専念します。
シュウ:楽しみにしています。メンバーが変わりながらもずっと続いてるバンドなので、今後も楽しみにしています。
新曲もできてきているみたいですが、最近はどんなものを聴いていたりします?
ナベ:最近よく聴いてるのはThe Move、Roy Woodのソロ、The SoundのAdrian Borlandのソロ、David Lewis、Van Morrison、Martin Newell、最近のバンドだとThe Strokesの新譜が良かったな。
あとは兒玉商店(岐阜を拠点にライブ会場等で出店する中古レコード店)で見繕ってもらったレコードをまとめて送ってもらったり。なかでもSteve Swindellsって人のレコードはカッコ良かった。
兒玉くんには色々教えてもらってます。

シュウ:歌のきれいな音楽が好きですよね。
僕がThree Minute Movie(以下3MM)と出逢ったのは1stアルバムの頃で、CDだけは前身のWallも聴いていたのですが、その頃からナベさんの音楽って一貫してますよね。その時期その時期で熱心に聴いてる音楽の影響は垣間見えますが、メロディ、ポップセンスは一貫してて、なかなか凄いなと。
ナベ:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
今までその時々でアルバムやシングルを作ってきたけれど、メロディを始め根底の部分は実はあんまり変わってないというところ。
The SmithsやThe Cureも好きなんですが、メロディやサウンドが美しいですよね。
キラキラしている。Billy BraggやKirsty Maccolのメロディも好きだし。
The Beatlesのホワイトアルバムもそう。
The Clashの1stと同じくらいに1番聴いたレコードだと思う。特にジョン(レノン)の曲"Dear Prudence"、"Happiness is a Worm Gun"、"I'm So Tired"とか。1番好きなのは"Julia"です。この曲を聴くと心が洗われます。まっさらな、優しい気持ちになります。
シュウ:そう、ナベさんがSmiths好きっていうのは音楽聴いて納得って感じですね。Billy Braggとかも。似てるわけじゃないんだけど。何をやってもその人になってしまうっていう個性。誰にもカバーできないやつ。でも、それは頑張って手に入るものじゃないし、好き嫌いは別れるだろうけど、僕はその個性に惹かれます。
僕はホワイトアルバムで一番好きなのは"Happiness is a Worm Gun"ですね。そしてナベさんが"Julia"が一番好きってのもうなずける。
ナベ:The Smithsの"There is a Light That Never Goes Out"は美しい歌詞とメロディーの両方を兼ね備えてますよね。「二階建てバスがぼくらにぶつかってきてもきみのそばで死ねるならそれほど素敵な死に方はない」という、とても繊細な内容です。刹那のロマンチシズム、そこから生まれた美しいメロディ。モリッシーの弱者の視点から描かれた歌詞とあの恍惚感はたまらなく好きですね。あとThe Jamの"That's Entertainment"も最高です。ロンドン郊外の寒々しいコンクリート、ポリスの車とうなるサイレン。状況描写が本当に素晴らしくて。3MMの3rdの"Dramatic City"を作った時に影響を受けました。
シュウ:そうそう、3MMといえば歌詞も詩的で世界観があって好きです。例えば4th、「Betting for Broken Players」の"Notes of Dirty Old Man"とか好きなんですが、チャールズ・ブコウスキーの世界を描いてるって感じですか?
ナベ:歌詞は曲によって、自分の実体験であったり、小説に影響されたものであったり。
そう、"Notes of a Drtiy Old Man"はブコウスキーのことを歌っているよ。
スウェーデンのバンドだっけ?Smalltownが世田谷代田のあの部屋(ナベ氏が以前Snuffy Smileの栄森氏と暮らしていたマンション)に泊まった時に出来たばかりのレコードのこの曲を聞かせたら、凄い気に入ってくれて。嬉しかったな。これはブコウスキーの歌じゃないか?って言ってた(笑)
ブコウスキーは好きだね。1stの長編小説「くそったれ!少年時代」は何回も読んだな〜。あと短編も凄く良くて「町でいちばんの美女」に収録されている「精肉工場のキッドスターダスト」は最高だよ。末端の労働者のどうしようもない日常をリアルに描いてるよね。3MMの6thアルバム、「Whisky Train」の"Kid Startdust"って曲はここからきてるよ。クソみたいな労働、やってらんねーって曲だね。
シュウ:僕もチャールズ・ブコウスキーは好きで、「くそったれ!少年時代」は特に好きですね。他、好きな作家とかいますか?特に詞を書く上で意識したり、影響受けてたりする。
ナベ:そうだなー、Littersとのスプリット7"、"Boys hide a Knife"は三島由紀夫の「午後の曳航」だったり、Whisky Trainの"1-2 for the Last Time"?はフリップ・K・ディックの「オモチャの戦争」がモチーフになっているよ。なかなか楽しいよね。
レイモンド・カーヴァーも好きだし、やっぱり自分に響いてくるような小説はたまにあって。そういう出会いは大事にしたいですね。あと最近好きな短編小説は阿部昭。ちょっと切ないんだけど、「天使が見たもの」は是非読んで頂きたい。淡々とした語り口でさりげない日常の断片を描いているところに惹かれました。

シュウ:なるほどです。阿部昭は読んだことがないですね。今度読んでみますよ。
で、ナベさんの音楽や詞の世界観は少し聞き出せたかなと思いますが、そんなナベさんの身近で共感したり尊敬するようなソングライターって誰かいたりしますか?
ナベ:FirestarterのFIFIさん。彼らが2ndアルバムを出す前くらいに法政大学の学館ホールに観に行って。完全にぶっ飛びましたね。なんなんだコレはと。どんな音楽を聴いたらこんな曲を書けるんだろうって思いました。Rockbottomのイナも良い曲を書きますよね。凄くメロディが綺麗。彼の創作ペースには驚かされますね。次から次へと曲を作ってる。あと歌が上手すぎ(笑)あと、Black and Whiteのサトシの曲も好きです。サビがキャッチーなんですよね。新しいアルバムでボーカルをダブルで録音できるのは歌に芯があるから出来ることだと思うんです。あの70'sパンクのサウンドでメロディがパキッとしてるって最強ですよね。
Firestarterのライブを観てからラズベリーズのレコードを買いました。そこからオーセンティックなロックのレコードを聴きつつ、改めてパンクロックも掘り下げて聴くようになりました。パワー・ポップとか全然知らなかったから。自分たちがどうの言うのはおこがましいんで。多くは語りません。
シュウ:僕も彼らは大好きですね。その人の持つメロディと声ってのはバンドその物だな、っていつも思います。3MMもまさに。
ナベ:ありがとう。「STAY BY YOURSELF」1人でいろ、自分自身でいろ、群れるなってところですね。あとはシュウくんのディストロで購入したThe Last Pintや、カナちゃんやってるVindictivesも良かった!いや〜楽しくなってきたな。最高の夜だねー
シュウ:いや、酔いもまわって来たようですしそろそろお開きとしますか(笑)
最後に、今後の予定、どうしたいとかどんな音楽を作りたいとかあれば聞かせてください。
ナベ:そうですねぇ…Sandiestのレコ発だった、4月の京都Pop Pizza!でのライブがコロナ禍で流れてしまって、8月の下北沢Basement Barのライブは自分たちの都合でキャンセルしてしまって。だからSandiestとは仕切り直しで是非やりたいです!ボーカルの山下くんとも約束したし。
あとはThe Redemptionとの共同企画「Sunrise」もやりたいし、自主企画「Wonder Beer」も。そういや3月のBalladmen企画も流れてしまったから、それもやり直したいね。

シュウ:この状況じゃ致し方ないですよね。しかしながらバンドによってはスタジオワーク、録音の準備など、なかなか充実した時間を過ごせているみたいで。
ナベ:そう、あとは次の7thアルバムに向けて曲を書いていきたいですね。とあるレーベルからリリースしたいんだよね。去年The Outcastsと下北沢シェルターでやった時に声をかけてくれて。
メンバー変わってるから実際どうなるか分からないけど。もうレコーディングしていきなり音源を送ってみようかなと。ダメなら自主で出しますよ。
大変な状況だけど、希望を捨てずに頑張っていきたいね。インタビューどうもありがとう。
シュウ:こちらこそ、ありがとうございました!