2021/01/08 19:15

by シュウ(G.T.D.Records/Balladmen)


PROM、VIDEO NASTY SCAPEGOAT、GATTACAその他、助っ人プレイヤーとして東京を駆け巡り、ここかと思えばまたまたあちら浮気な人ね、ギター、ベース、スティック、マイクまで、小脇に抱えバンドからバンドへ。さっきまで西荻にいたのに、おや?今しがた下北での目撃情報あり。明日はどこへ行くのやら。はたまた本当に彼は一人なのであろうか?

今回はそんな万能プレイヤー、タンゲ・キイチロー氏の素顔に迫るべく、もしくは「複数人存在説」を立証するべく、おっかなびっくり、インタビューを試みた。

シュウ:今回はインタビューをお受けいただきありがとうございます。とりあえずは、お誕生日おめでとうございます。いくつになりました?


タンゲ:ありがとうございます!29歳ですね。


シュウ:活動盛りですね(笑)。タンゲさんはPromをはじめ、色んなバンドや形態で活動されているみたいですが、まずは現在の活動内容をざっと教えてもらえますか?


タンゲ:自分がギター、ボーカルを担当するPROMと、弾き語り活動のVIDEO NASTY SCAPEGOATと、2020年3月結成の自分がドラム担当のバンドGATTACAが主な活動です。


シュウ:GATTACAについてはタンゲさんのSNS上で拝見しました。メンバーとかサウンドとか、どんな感じなんですか?


タンゲ:GATTACAはsassya-のイワカミ、AKUTAGAWA FUNCLUBのイトウと結成したバンドです。サウンドはJESUS LIZARD、WIPERS、HOT SNAKES等に強く影響を受けています。2020年12月に1st EPをリリースしたので、こちらも是非よろしくお願いします!

シュウ:おお、タンゲさんがPROM以前にギターを弾いていたDIZZY DAZEにもWIPERSとかHOT SNAKESの影響ありますよね?PROMにもDRIVE LIKE JUHUっぽい曲があったりするように思うのですが、やっぱりその辺り好きなんですかね?


タンゲ:HOT SNAKESやDRIVE LIKE JEHU等のサンディエゴ周辺バンドは、DIZZY DAZEのメンバーの影響で聴くようになりました。

PROMではあまり前面に影響を出せていないかもしれませんが、ああいった様に既存のパンクアプローチからはみ出そうとしているバンドは好きですね!


シュウ:かっこいいですよね!あとDIZZY DAZEのセンス好きなんですよね、グランジっぽかったりFUGAZIっぽかったりもして。

では、そのあとのPROM結成までの流れ的なものを教えてもらえますか?


タンゲ:2016年に、当時カナダに在住していた中学校時代の同級生のミヤタケくん(PROMベース)が帰国して、久しぶりに会いまして彼はラップグループをやったりトラックメイクをしたりと宅録に慣れていたので、彼に自分の新バンドのデモ録音をお願いすることになりました。その時メンバーは自分1人だったため、全パート自分が演奏し、高円寺のスタジオで4曲を無理矢理録りました(笑)

そのデモからPROMとしての活動がどんどん本格的になっていった、という感じですね。


シュウ:PROM以前、DIZZY DAZE以外にもなんかやってましたよね?


タンゲ:PROM結成前はDIZZY DAZEの他、THE TOLCHOCKERSというバンドに在籍しておりました。

毎週末、両方のバンドでスタジオ練習やライブをするのがとても楽しかったのですが

過ぎていく週末の中で「いつかは、自分で組んだバンドをやりたい」という気持ちが常にあって。


シュウ:じゃあ自分が曲を書いて歌ってっていうのはPROMが初めて?


タンゲ:いえ、その前にTHE LOW SAVIESという名前のバンドで1年くらいギターと歌をやってました。オルガン、ドラム、ギターという編成のバンドで、主に東高円寺のUFO CLUBや下北沢DAISY BARで活動していました。

その時はTIMERSやMOJO CLUBなどの日本語ロックとガレージパンクに没頭していて

若干特殊な編成ということもあり、なんとかオリジナリティを形にしたかったのですが

なかなかうまくいかず、メンバーが抜けていき、また1人に戻りました。


シュウ:結構短いスパンで色んな音楽演られていますね。


タンゲ:何というか、自分が根本的にすごい飽き性というか、ビシッとしてないんですよね(笑)。だからTHE LOW SAVIESの時も「なんか違う」って思って、すぐ投げ出してしまいました。


シュウ:確かに、参加してから辞めるの早いですよね。PROMは是非継続してもらいたいものです(笑)

タンゲ:PROMは来年4年目に差し掛かるのですが、ようやく自分のやりたいことが掴めてきている気がします。今もたくさん曲作ってるし、まだまだ辞められないですね。

そのうち弱気なこと言ってたら、叱ってやってください(笑)


シュウ:そうですね(笑)。僕はPROMはタンゲさんの本質が一番現れているバンドだと思っているのですが、HUSKER DU後期〜SUGAR、JAWBREAKER、DINOSAUR JR.とかの影響が垣間見えるように思います。

実際のところ影響を受けた音楽ってどんなものがありますか?


タンゲ:HUSKER DUとSUGARは大好きです!

JAWBREAKERは、PROMのライブを見てくれたお客さんや、それこそシュウさんに教えて貰ってから没頭していきましたね(笑)DINOSAUR JR.も周辺の方々から「似てる!」って声があって、自分も聴いてみようって感じで聴いてました。自分のギターの手癖がHR/HM寄りだったりするので、確かにDINOSAUR JR.初期の3枚はPROMと似ているかもしれません。


僕が自分のバンドをやるなら「ハードコアパンクのアグレッシブさにたくさんのメロディを詰め込みたい」と思っていてそこら辺の感覚が前述のバンドに似ていると思います。


THE TOLCHOCKERSの時にCRUSTのバンドと共演することが多く、全バンドめちゃくちゃデカい音量でプレイしてるんですよね。だから、自分たちも必然的に出力が大きくなっていきました。なので、PROMもそのくらいの音量でプレイすることが

自分にとって「1番気持ち良い音」になってしまったのかもしれません…(笑)


シュウ:そうなんですね!あの曲の途中でリズムが変化したりする独特のアレンジ、JAWBREAKERからの影響だと思っていました。2ndアルバム"Bivouac"辺りの。


タンゲ:過去に自分が熱心に聴いていた音楽が80s USHCばかりなので、展開とか諸々参考にしているもの音楽が少なくて...(笑)

JAWBREAKER、LEATHERFACEぽいって声を頂くことが多いです!実際それで自分も聴いてみて、ズブズブにハマってます。そういう風に、自分の聴いていなかったバンドにたとえられることが嬉しかったりしますね。

あ、でもPROMISE RINGには影響受けてます。あの、明るい曲調なのにどこか郊外の町で独りぼっちかのような寂しさが好きです。


シュウ:PROMISE RINGよく知らないのですが、LEATHERFACE良いですね。僕も"Fill Your Boots"とか大好きです。それこそHUSKER DUミーツMOTORHEADとか言われてますもんね。

ところで音楽以外でタンゲさんの音楽の素になっているような物事ってありますか?


タンゲ:やはり、スケートボードとホラー映画ですかね。

僕の中学校のバスケ部は割と名が知れていて、全国大会とか(?)よく出てました。

その強いバスケ部の中の万年ベンチくんみたいなのが僕で、あまりにバスケが嫌になったので辞めちゃったんですよね。


その時に午後のロードショーでたまたま見た映画バック・トゥ・ザ・フューチャーにめちゃくちゃ感化されて「スケボーなら誰もやってない、一人勝ちできる!!」とか思って(笑)。

中学~高校2年生まで、かなりの頻度で羽根木公園(世田谷区の公園)でスケートボードで遊んでいました。


シュウ:名門バスケ部のベンチは背負うものが計り知れないですね(笑)。


タンゲ:「ベンチに座る部活」かと錯覚するほど、ベンチでした笑。


シュウ:僕も映画バック・トゥ・ザ・フューチャーはめちゃ好きですね!全てが凝縮された夢のような映画ですもんね。僕なんかは普通にエレキギターかっこいい!ってなったんですが、スケボーなんですね(笑)。

スケボーはパンクと密接なので、何となくPROMへの反映が理解できるのですが、ホラー映画ってのはどんな具合に?

タンゲ:ギターもカッコいいですね~、キャラの服装とかもオシャレだし、その通り夢が凝縮されてますね。

昔は明大前に「古本大学」ってお店があって、古本以外にも80年代~90年代初頭のスプラッター映画ブームのVHSや「ガロ」って本が大量に置かれてまして、そこに頻繁に通ってました。皆が汗かいて部活を頑張っている時間に、そこで悪趣味なパッケージの数々を眺めていることが唯一の自己証明というか...。「こんなやばい世界があることを自分だけが知っている」ってことにドキドキしてました。


シュウ:その「自分だけが知っている」ってのが、子供の頃は快感なんですよね、めちゃ分かります。例えばどんな作品です?


タンゲ:「悪魔のいけにえ」「死霊のはらわた」等の定番から「ジャンク 死と惨劇」「八仙飯店人肉饅頭」等、名前が物騒であればあるほどドキドキしながら借りてました。

非常に暗い中学生(笑)。


シュウ:人肉饅頭!僕も20年以上前だと思うけど、友達みんなと観ていて、その場にいた女の子が泣き出しちゃったことあったな(笑)。


タンゲ:PROM結成前、バンド名を決めるときキャリーという映画を久々に見て、プロム(アメリカの高校卒業パーティ)のシーンがあるのですが、そのラストシーンがあまりにカッコよく見えて、バンド名は"PROM"しかない!ってなりました。


シュウ:ソロプロジェクトのVIDEO NASTY SCAPEGOATってのも由来はその辺りから?

タンゲ:ですね。80年代後半に、残虐なホラー映画を取り締まる"VIDEO NASTY"という運動があって、それの影響で沢山のホラー映画が規制、摘発されてしまったんです。そんな残酷映画を見ていた自分と世論を照らし合わせてVIDEO NASTY SCAPEGOAT(ゴミ映画の犠牲者)と名付けました。


シュウ:そのVIDEO NSATY SCAPEGOATの音楽はどんなものなんでしょう?こんな感じを目指している、とかあれば教えて下さい。


タンゲ:アーティストでこれと言ったものはあまり無いのですが、強いて言うならMac DeMarcoやDaniel Johnston等かもしれません…。極力、家で練習している様な、RAWな環境で音を出したいのでライブは3ワットの電池式ミニアンプといつものエレキギターでやっています。歪みとか、ピッキングでニュアンスが表現しやすくて気に入ってます。


シュウ:そう、PROMを聴いていても思うのですが、パンクそのものというより、90s以降のオルタナティブ・ロックの影響が強い感じがしていて、納得です。

PROMの他のメンバーについてもそんな感じですかね?ミヤタケさんなんかはヒップホップが好きだと聞いてますが、あまりPROMには反映されてませんよね?ファッション以外は(笑)


タンゲ:ミヤタケは毎日スケートボードに乗って遊んだり、好きな音楽のCDをシェアしてました。

確かに今はヒップホップのイメージの方が強いですが、彼はOi PUNKやNEW WAVE/POST PUNKに凄い詳しくて中学生なのにスキンヘッドにサスペンダー、ベンシャーマンのシャツとか着てて、かなりオシャレでした(笑)。

ミヤタケはいまPROMと並行して"INDO"というラップグループをやってます。


ドラムのこーちゃんはミヤタケの小学校時代の同級生で「やたらドラムが上手い奴がいる」って話をちょこちょこ聞いてまして、高校生の時僕がやっていたバンドがドラマー不在になった時、真っ先に紹介して貰いました。

大学生になっても同じ焼き鳥屋でバイトしたりしてて、何だかんだ付き合いが長いです!

こーちゃんはPROMの中で唯一パンク/ハードコアの洗礼を思春期に受けていなくて高校生の時はGLAYとかL'Arc-en-Cielとか好きだったと思います。僕が共通して好きなバンドはGET UP KIDS、JIMMY EAT WORLD等ですね。


シュウ:なるほど、ありがとうございます。そんなPromは今後、どんな活動を予定してますか?何でも新しい音源を作る予定があるとか?


タンゲ:はい、年末にレコーディングした3曲をシングルでリリース予定です。

現在ミックス中ですが、ラフの時点でとても良い感触がしてます。

結成4年目になる2021年に、初期よりだいぶ進化した楽曲陣をドロップできると思います!

シュウ:お、CDですかね?たのしみにしてます。

では最後に、居酒屋たんちゃんて何ですか?(笑)


タンゲ:あ!「ちょい飲みたんちゃん」ですね(笑)。

2020年の緊急事態宣言時、本当に居酒屋さんとか焼き鳥屋さんとか空いてなくて…。

あまりにも寂しかったので、お家で焼き鳥や小鉢を作ってはinstagramにアップするということが日課になっていました(笑)。

ご縁あって1度出店させて頂いた事がありまして、機会があればまたやりたいな〜なんて思ってます!!


シュウ:オンライン酒場ですね、次回出店の際はぜひご連絡を(笑)。

ありがとうございました!