2022/10/20 20:01

 今回は前回のThree Minute Movieのインタビューの続編として、渡辺氏自身にアルバムを制作する上で聴いた音楽、読んだ本などを紹介していただこうかと思います。

狙いは以下、本人談の通り。コメント自体も本人の感性が見て取れるようで楽しい。いろんな角度から3MMの7thアルバムを楽しむ材料として、是非お役立てくださいませ。(G.T.D.)



 自分の好きなバンドが何に影響を受けて曲を書いたのだろうか?

例えば私が好きなTHE CLASHのメンバーのルーツを辿ると、レゲエはもちろん、スカやロカビリー、グラムやブルース、ソウルなど。それらを知ることでより一層その音楽に対して想いが深まることがあります。


そこで、今回のアルバムのサウンドや歌詞を作る上で影響を受けたレコードや本、映画を紹介したいと思います。アルバムを聴いてくれた方がよりバンドを身近に感じ、掘り下げるきっかけになってもらえたら嬉しいです。


もちろん私1人だけではなく、3MMのメンバーがそれぞれ聴いてきたものや各自の個性も含めて曲は形成されています。そこでオリジナリティが生まれるのがバンドの面白いところであると思います。

 

text by 渡辺尚史/Three Minute Movie



【音楽】


"Crazy ‘bout You"/NASTY FACTS

1981年NYのPOWER POP、POP PUNKバンド。超絶キャッチーなメロディで唸りをあげるがのごとくドライブしていく名盤7inch収録曲。



"City Creatures"/V2

ヒリヒリと疾走するマンチェスターGLAMパンク。



"Fire Brigade"/MOVE 

オーケストラのバイオリンのような独特なキメが多いのはおそらくRoy Woodがクラシック音楽を好きだからだろうと、3MMベースのRENは推測している。



"Good Night Jimmy Lee"/ROLL THE TANKS

メロデックパンクのキラー7インチ。後にエピタフと契約。



"Lovefield"/ADRIAN BORLAND

THE OUTSIDERS、THE SOUNDのシンガー。心の内側に向かっていくような詩とサウンドが儚くも美しいソロアルバム。



"The New Abnormal"/THE STROKES 

2020年のコロナ禍でリリースされたアルバム。ビリー・アイドルとトニー・ジェイムズも参加。広い音域を自在に駆け巡るボーカルがドラマチックかつ悦に入っていて気持ちいい。



 "New England"/Kirsty Maccoll

キラッキラの80's POPソング。

オリジナルは労働者支持のシンガーBilly Braggによるプロテストソング。"ワンマン・クラッシュ"と言われ弾き語りで怒りをぶちまけた。



"Pink Moon"/Nick Drake

ブリティッシュ産、引き篭もりシンガー。

一貫した美しさと透明感を持つ杞憂な存在。

生産性だけがこの世に生きる存在価値を測る物差しではない。



"Shut Up! Field of the Down"/AGGRESSIVE DOGS

旧ロフトやアンチノックの階段を降りていく時のドキドキ感は今でも忘れられない10代の思い出。この頃は何に対しても投げやりでやけっぱちだった。



"Songs of David Lewis"/David Lewis

アンドウェラの優れたソングライター。(自分は)鍵盤は弾けないが、ピアノの弾き語りみたいな曲を作ってみたかった。



"a Sunflower at Chrirtmas"/THE PEARLFISHERS

英グラスゴーのインディポップ。美メロと優しい歌声からなるクリスマスソング集。ポップ職人による良質なアルバム。



"Sylvie In ToyTown"/Martin Newell

この曲で使われている鐘の音をレコーディングで取り入れたかった。サビの煌びやかさを一層引き立たせているのだ。ほんとはシンセで入れるらしいが鍵盤は弾けないのでオモチャの鉄琴を使用。思ったよりショボい音でエンジニアの方の加工で良い感じに仕上げてもらった。



"小我から大我へ"/YOSHIHRO HIRAOKA&HUMAN ARTS

POISON ARTSのメンバーによるソロプロジェクト。ハードコアだけに止まらないロックンロール、ハードロック、パワーメタル等を感じさせる幅広いアプローチがめちゃくちゃカッコ良い。



"1970’s Boy"/LONG TALL SHORTY

英NEO MODSの荒々しく2コードで切り刻んでいくPUNKナンバー。



【映画】


"LA HAINE"(『憎しみ』1995・仏)/マチュー・カソビッツ

パリ郊外のスラムに住む移民の若者たちはやり場のない鬱屈した怒りを夜の街にぶつける。この映画のような世界観を歌詞で表現したかった。



"Riff-Raff"(『リフ・ラフ』1991・英)/ケン・ローチ

最下層の労働者の暮らしを描いた温かくも切ない物語。



【小説】


"午後の曳航"(1963・日)/三島由紀夫

純然たる潔癖を追求するあまり残酷に暴走する少年たちのいびつな物語。



"天使がみたもの"(2019・日)/阿部昭

短編の名手。あまりにも儚く、悲しい物語。



"夜と灯りと"(2010・独)/クレメンス・マイヤー

旧東ドイツ生まれの短編作家。主人公の少年がガールフレンドのもとを離れて、街を去っていく下りは実は「男はつらいよ」の寅さんの世界観でもある。