2023/02/10 17:53
コロナ禍真っ只中の2020年初頭、Dr.コンバット氏を中心に結成された4人組パンクバンド「SHE's」。ほどなくライブ活動を開始。知り得る限りではあるが、各メンバーの活動歴からは想像し難いそのサウンドに私は驚いた。人を喰ったようにキテレツな展開、いびつなのに不思議とキャッチー。ドラム、ベース、ギターにピアニカという特異な編成。彼女らの奏でる楽曲は一度聴いた者の耳にしっかりと残る。
そんなSHE'sが初めての音源となる7"epをリリースするとのことだ。先だって収録予定の4曲を試聴させていただいたが素晴らしい。三者三様で、どの曲もその背景に目を向けずにはいられない。そこで発売に先駆け、彼女らにインタビューさせていただくこととなった。
今回は彼女らのサウンドさながら、持ち前のキャラクターのお陰でとても楽しいインタビューとなりました。EPが発売されたら是非ともゲットしていただき、このインタビューを肴に楽しんで貰えればと思います。

text by G.T.D.Records
G.T.D:まずですが、epの発売おめでとうございます。聴かせていただきましたが、4曲それぞれ個性的な楽曲でとても楽しめました。一曲一曲が短いこともあり、何度も繰り返し聴いてしまいます。2020年結成で、今回が初めての音源ということなので、バンドのスタートからお話を伺いたいと思います。最初はコンバットさんが中心となって結成されたと伺いましたが、経緯などお聞きしてもよろしいですか?
コンバット(以下C):2017年に私が別のバンドでアメリカに行った時に、アヤちゃんにお世話になって。
アヤ(以下A):それから2年半後くらいに私がサンフランシスコから引っ越してきて、その1ヶ月後の2020年1月にコンバットを誘った。最初コンバットはX-Ray Spexの曲カバーしたいって言ってたね。
C:”I am a Poseur”ね、やってみたけどできなかった!私、その頃、オリジナル曲作って自分のバンドやらねば!と鼻息荒くなってて。この機会逃してなるものか、ってことで、人を誘うとか全くしないタチなんですが、思い切ってユウコりんとじゅんじゅんに声かけました。まず、ユウコりんを誘ったんだけど、XTITSの大ファンだったので、OKしてもらって一緒にスタジオ入れた時は嬉しかった。
ユウコ(以下Y):私は高円寺の喜楽で声かけてもらって、やるやるー!って言ったんだけど。後日、初めて2人でスタジオ入った後、一杯飲みに行くかって思ってたらコンバットが帰るって言うから、あーオーディション落ちたのか?って思って土砂降りの中トボトボ帰宅したのを覚えています(笑)

photo by タカダユウコ
C:マジ⁉︎
A:ユウコりんが合流して、最初はJERKSの"Get Your Woofing Dog Off Me"なんかもカバーしてたけど、まあまあ早い段階でオリジナルを作りだしてたね。
C:じゅんじゅんとはちょっと一緒に演奏したことがあって、他のバンドに先に取られたくない!って思ってて。ちなみに、じゅんじゅんも私も大ファンの、HEYのライブで誘いました。
じゅんじゅん(以下J):私はコンバットしか面識なかったから、最初の顔合わせはめっちゃ緊張したし怖かったわ〜、お前誰だよ?って感じで。もう何曲か完成してたから、どんなの弾いていいのか見当もつかなくて。私も初スタジオの帰り、オーディション落ちたと思った(笑)
C:マジで⁉︎
J:みんなコロナ禍でやってたバンドが休止したのもあるけど、やっぱりコンバットのドラムが魅力で一緒にやりたいと思ってるから、そりゃ本人から誘われたら断らないよね。その後、過酷な無茶ブリが待ってるとも知らずに…。
G.T.D:楽しそうですね(笑)パンクバンドにピアニカって、なかなか珍しい編成なのかなって思ったりするのですが、じゅんじゅんさんをバンドに誘ったのって、何か狙いがあったりがするんですか?こういう音楽がやりたかった、とか。
C:バンドの音作りとかよく分かってないので、ピアニカをこういう風に使いたい、みたいなのは特に無かったですね。単純にピアニカのいるバンドって見かけないし、秘密兵器!みたいなイメージで。でも最初にじゅんじゅんに入ってもらった時、みんなは戸惑ったかも(笑)
J:バンドが始まって半年以上経ってからその当時できてた4曲の練習音源が送られてきて。コンバットからは特に指示もなく自由にやってね!って感じだったので、最初のスタジオのとき、今まで他のバンドでやってたようにギターを補足する感じのリフみたいなのをピロピロ〜って適当に吹いてたら、アヤさんとユウコりんが困惑してて(笑)あ、これじゃないんだ、ってなった。
A:最初は物珍しくてどういうふうにピアニカを活かしたらいいのか勝手がわからなかった。ピアニカをどこで挿入してもらうか、それをどう伝えるのかっていうのでちょっと戸惑ったんだよね。
J:どうしたらいいのか結構悩んだなー。それでバンドやってる知り合いに相談したら、X-ray Spexみたいなのがいいんじゃないってアドバイスしてくれたの。
C:最初にX-rayやろうとしてたことは言ってないのにね、奇遇だね。
J:だね。んでX-rayのYouTubeリスト片っ端から聴いてサックス部分だけ楽譜に書き出して、そこからフレーズを切り貼りしてピアニカソロに流用させていただきました。後にも先にもそんな事したのはこの時だけです (笑)
Y:ピアニカって聞いて、X-rayのサックスみたいな感じになるのかなー?って勝手に想像してたんだけど、ピアニカはやっぱサックスとは全然雰囲気違うんだなって思った。結果、違くて良かった!
A:今となってはギターが2人いるバンドとなんら変わらない感じで全曲自然にピアニカ入ってて、でもギターとは明らかに違うからお得感2倍みたいになってる!
そういえば、最初コンバットがじゅんじゅんのことを「プロの人だから」って言ってて何それコワイって思ったよ (笑)
J:マジかーーー プロの人て (泣)
G.T.D:因みにじゅんじゅんさんは何のプロなんですか?
C:唯一楽譜が読めるのでプロ認定してます!(笑)

G.T.D:そういうことですか(笑)でもピアニカがバンドの良い個性になってますよね。聴いてる方もそれぞれで色んな印象を受けると思います。僕なんか勝手にザディコとかジプシー・スウィングとかのアコーディオンを連想してました。”ポポポ”なんて完全に「ジプシースウィング・パンクじゃん!」とか思いました(笑)それで、コンバットさんにそんなふうにお話したら、ちょうどジプシースウィングを聴き始めているところだとか仰っていて。
C:そーなんです!ポポポを作った時はジプシースウィングなんて知らなかったから、メンバー間では、コサック?インド?ヘビ使い?とか言い合ってました。他にもなんかあったよね?
Y:ジンギスカン?
A:ポルカっていうのもあった。
Y:あった!とにかく民族系なイメージだったよね。
A:テトリスとかも言ってた。とにかく色々名称が出てたってのがメンバーの動揺を表してたと思う(笑)完成するのに一番時間かかったよね。
J:一番の謎が「ポポポ」だよね。歌詞にも「What’s ポポポ」って出てくるとおり、意味は誰も知らない (笑)
Y:ポポポって何だよって思いながら歌ってます (笑)
C:ポポポって何だよ、っていう曲だからそれが正解!じゅんじゅん、アコーディオンを連想、っていうシュウ君(G.T.D)の印象については何かある?
J:鍵盤ハーモニカって曲調によってアコーディオンや、サックス、オルガンにも聞こえたりするけど、アコーディオンより簡単なのですごくお得な楽器なんですよ。あとやっぱり息で音出してるので、歌と同じように演奏できるのも魅力ですね。誰にでもできちゃうから、この楽器のおいしさにみんな気付かないといいなーと思ってます(笑)
C:さすが、プロのコメント! (笑)
話を戻しまくると、少し前に近所のレコード屋で定期的にやってるジプシースウィングのオープンマイクをふと見に行って、おーーこれは、と思って。ミーハーなんで、今作ってる新曲の間奏はこんな感じで!ってジプシースウィングの動画をメンバーに送りました。結局、ジプシースウィング要素ほぼ無くなってますが (笑)新曲、レコ発でやるつもりです!

G.T.D:それは楽しみですね!
A:あ、ポポポやる時、何故か謎のステップ踏むと弾きやすいです。
Y:2人がステップ踏みながら楽しそうに弾いてるのに、私は歌とギターで必死なので一緒に出来なくて悔しいです...。
C:レコ発では、みんなもステップ踏んでみてね!
G.T.D:わかりました(笑)では、皆さんはパンク以外ではどんな音楽を聴いていらっしゃるんです?アヤさんなんかはベースを始めた切っ掛けが確かジャズだったとか?
A:うわー、それシュウ君ともう1人くらいしか知らん恥ずかしい情報!
私は1983年にサンフランシスコに渡ったのですが当時のサンフランシスコっていろんなバンドがいて。ChromeのHelios CreedとかResidentsとか変な音楽やってる人がわんさか居て(笑)
その中でもClub Foot Orchestraという集団はジャズみたいなパンクみたいな訳の分からない音楽を大所帯でやっていて衝撃でした。日本にいる頃からレコードを集めたりライブに行ったりしてたけど、サンフランシスコに移り住んだことによって更に拍車がかかって手当たり次第聴くようになっていきました。ベースを始めたキッカケは本当におこがましいんだけど、Ornette Colemanの"Lonely Woman"という曲を聴いて、まあジャズなんですけどその曲でCharlie Hadenが弾いていたベースが脳天にドーン!って来ちゃって。それまでは感情ってギターでしか表せないと思っていたのが覆えされたというか。初めてベースという楽器に興味を持ちました。
G.T.D:ジャズはジャズでもCharlie Hadenとはかなり特殊なケースですね(笑)
僕は初めてSHE'sを観たとき、普通の8ビートではないな、っていう印象があって、変拍子や展開が普通じゃないってのもあるけど、ビートそのものが粘っこいというか。音源聴いて少し印象変わりましたがMike Wattとか思い出しましたね。納得です。
他の皆さんはどんな感じです?これまで聴いてきた音楽とか。
Y:私はずっと変わらず一番好きなのはThe VIBRATORSとか70'sパンクだけど、パンク以外では若い頃にグランジ/オルタナ/ギターポップの影響を受けてるので今でもそういうバンドが好きで聴き直したり持ってなかったのを買ったり。SUEDEとかPIXIESとかThe CUREとか。
C:ユウコりん、夜中にSUEDEのおススメ曲私に送ってくれたよね。同じ動画を何度か(笑)
Y:そうそう、酔っ払って(笑)最近買ったのは前から好きだったGIRLS AT OUR BEST!の最近出た3枚組とか。あとはラジオで聴いて気になったバンドを調べて買ったりしています。有名なんだろうけど全然知らなかったフェス系?のバンド、STEREOPHONICSとかFRANZ FERDINANDとか。
J:私は、好きな音楽とかを聞かれると困っちゃうんですよね〜。子供の頃の音楽原体験も、アリス、冨田勲、ナット・キング・コールってこの時点でもうめちゃくちゃ(笑)中学でThe SMITHSとかXTCが好きになっても趣味が合う子は誰もいない (笑)でもハワード・ジョーンズやDEPECHE MODEの来日公演に行ってたから、好きな音楽は生で聴きたいっていうのはこの頃から変わってないみたい。高校の時は予備校で知り合った子たちがパンクの入門や日本のロック、酒タバコなんかをひと通り教えてくれていちばん刺激ある時代だったけど、大学に入ると突然ロックに興味なくなって、ミニマルとか現代音楽ばっかり聴いてた。極端だよね。
70's パンクとかパワーポップ聴くのはずっと後だし、そう考えるとあんまりパンク聴いてないんだけど、今思うとバンドやるにあたって私みたいな節操のない素人にも寛容なのがパンクという音楽なのかなって感じます。
C:プロだけど素人!
J:バンドは見る専門でやるとは思ってなかったから(笑)
A:改めて聞くと、やっぱみんな雑食だよね。だからSHE’sの音も訳わかんない感じなのかな(笑)
G.T.D:聴いてる方も次はどんな曲が飛び出すやらってワクワクしますよ(笑)色々詰まってて、それでこそバンド!って感じですね。
【続く】
※後編は2/17金曜投稿を予定しておりますm(_ _)m