2026/09/05 12:32


【後編】

シュウ:「僕ならばこうする」に共感します。俺もずっとそうやって影響を受けてきました。たぶん沢山の人たちも。

カズマロさんはこれまでバンドだったり詩作だったり、色んなスタイルで活動されてきてますが、今後、フォークシンガー以外での活動の予定、もしくは意欲はありますか?


カズマロ:僕はずっと、フォークロック/ブルースのバンドをやりたいと思っている。ただ、シュウもわかるだろうがバンドをやるのはとても難しいことだ。いまここに住んでいることや、収入のことが、それをさらに難しくしている。

自分のインディーレーベルであるグロウワームから何かリリースしたいとも思っている。それもなかなか難しい。アラン・マッギーがクリエーションレコードを立ち上げたときのように、金を貸してくれるところがあればいいんだけどね。


シュウ:音楽やるゼニくらい音楽で稼ぎたいものですね。世界情勢、物価高騰やその他色んな理由で、ただでさえ理想からかけ離れていく今日この頃、プラス、ストリーミングサービスの台頭で、リスナーが2極化、音楽の聴かれ方がすっかり変わってしまいました。バンドやアーティストにはほぼ金が入らず、サービス元には安定的に金が入る。が、バンドやアーティストは利用しないわけにはいかない。やってないと興味すら持たれない。そんな状況があるかと思います。カズマロさんはどう捉えていますか?


カズマロ:一切無視したい。ははは、そんなわけにはいかない。どうなんだろう、サブスクリプションで音楽を売ることって僕にはあまりにも魅力がない。僕がバンドを始めたのは1983年なんだ。今も住んでるこの街で、昔ながらの喫茶店でバイトをし、得た金でレコードを買い本を買い、可能な限り学校はさぼり、バンドをやって、それで経済は成り立っていた。そのことを今、曲にしようとしているんだが、タイトルは「ない街の経済」になりそうだ。


本当に配信サービスでいいのか、僕は疑問視している。「いい音楽」は聴かれるのだろう。だが、僕のやるような「よくない音楽」はどんどん聴かれなくなり、再生回数もはっきりしないまま埋もれて行くんだろうな。

僕もシュウも、レコードを作ることができた。ラッキーな種族だと思う。とりあえず、物は残るんだ。


サウンドクラウドでバンドキャンプの様に音楽を売ることができるようになる、というニュースを今日、僕は見た。当たり前だが状況は変化する。よくなることもあるだろうし、そうでなければ地下に潜るという選択肢もある。儲からないけどね。楽観的だろうか。誰が儲けているのかな、少なくとも僕は儲けてはいない。まともな芸術が危なくなると、芸術家は地下でそれを支えてきた。種子の姿で次の開花を待ってきた。苦しいときが続いても、いつか、と僕は思っている。・・音楽配信はよくない商売だと僕は思う。


シュウ:世の中が貧しくなったと思えばやむを得ないと感じますがね。持つ者と持たざる者、持つ者は守り、持たざる者は攻める。俺たちはより良いモノを作ろうとするのみでござる。

ところでカズマロさんて、作品のこと?を作物っていうじゃないですか。あれってどういうこと?どっかからの拝借?


カズマロ:僕が自分を僕というのと同じ理由。アナーキスト大杉栄は自分を僕と言い、作品を作物と言う。おそらく品は動かないが物は動くからそう言っていたんだと思われる。僕は動く物を作っているので作品ではなく作物と言う。


シュウ:そうだ、大杉栄だった。では、その作物、今回のアルバムの話に移りましょう。

アンカウンタブル・ブルース、とはどういう意味なのか。カウンタブルなブルースに対して、カズマロさんなりのアンチテーゼだったりするのか、とか想像しています。お話ししてもらえますか?


カズマロ:翻訳ソフトを使うと「数え切れないほどの憂鬱」とか出てくる、それが正解、僕のまず言いたいことはそれだった。カウンタブルではないブルース、とは何か。カウンタブルなブルースとは何か。あとから自分に問いかけることになった。ブルースは、小節数、コード進行、歌詞の構造によって量られているが、伝統的なブルースはそれで量ることはできないよね。そこからあふれた別の何かによって僕は音楽からブルースを感じる。バラッドメンの言う「シャッフル」とかそういった物だ。数え方が違う、カウントの方法の違う、量的に異質な何か。それは今感じとることができるが、僕にはうまく説明できない。おそらく新しい数学がその辺りをフォローしていると思う。

「不可算な憂鬱」をタイトルにしたが、結果12曲35分という量ができあがった。実際にアンカウンタブルにするためには聴いてくれる人たちの協力が必要だ。僕のブルースを動かして欲しい。願いのあるタイトルになった。



シュウ:そうですか。協力できているかどうかわかりませんが、気に入ってよく聴いてますよ。どの曲も好きですが、「キャロライナ・スリム」とか、「コンポジション #16」とかギターが歌うのをバックに話してる曲が特に好きです。あのスタイルはどうやって生まれたのでしょう?最初聴いた時、連想したのはT.V.スリムとかのトーキング・ブルースでした。


カズマロ:ありがとう、気に入ってくれる人がいるならば、僕の音楽はそこでも動くのだ、と思う。

トーキングブルースは、もっと伝統的なスタイルで演ることもできなくはないが、僕にはスキルが足りないので、今回のような形になった。これはトーキングブルースというよりどちらかというとポエトリーリーディングなのかな。今気づいたけどロッド・マッケンがこれに近いことをやっているかもしれない。もちろんケロアックの影響は強い。


シュウ:あー、ジャック・ケルアックですね!あとふと思い出したのですが、ジェリー・ロール・モートンとか。

あと「コンポジション #16」では歌詞カード上の表現にもこだわってたじゃないですか?あれはどういうアレだったんでしたっけ?


カズマロ:いわゆる現代詩では視覚的なアプローチ、もっと言えば詩人の息を表現するテクニックとして改行は用いられている。というか改行も詩の一部分として活用している人たちがいて、僕もそのひとりだ。


シュウ:へー、色んな型があるものですね。そこのところ詳しく聞きたいです。改行というテクニックを使って、読んでる人や聴いている人たちにどんな反応を期待しているのでしょうか?もしくは何を伝えたいのでしょうか?


カズマロ:ひとつひとつのテクニックについて話すのは止めておくね。ここはこういう意味でチョーキングしました、と言うギタリストはいないだろう。だが僕が何を表現したいか、を言うと、自分は生きていてそして死んでしまう存在である、あなたと同じように、という事なんだ。それを形にしてシェアしたい。


僕は動く物を作りたい、僕は動いているので。それをうまく伝えることができるように、詩を書き、曲を作っている。果たして成功しているかどうかは置いて。ライヴで会ったり、レコードを聴いたりしてくれた人のなかで、僕は生き、死ぬということや、どのように息をしてどのように話すかが伝わるといいと思う。僕の伝えたいことが文字通り伝わる、ということはないだろう、聴いてくれた人のなかで変化すること、動くことを僕は望んでいる。今回のアルバムには幸い歌詞カードが付いたので、それも併せて使ってほしい。


そうだなー、僕の詩も歌詞も日本語だ。日本語の詩のメジャーはほとんど文字の数、例えば575とか57577とかしかないけれど、あとあるのは頭韻と脚韻か、僕は少し違ったことをしている。シュウは押韻しない歌詞だね。散文的な歌詞だ。


シュウ:俺の歌詞なんて音楽の中のほんの一部ですよ。出来事をつらつらと並べているだけ。しかしながら人それぞれ色んな表現方法があり、方法には可能性があるのだということですね。カズマロさんのように歌詞の内容のみならず、読み物としての表現だったり、例えばアートワークそのものがメッセージだったりする作品もあるわけですからね。

ただそれらが成功しているかどうかは置いといてという部分、共感します、意外と結果には無頓着なものです。


ところで、カズマロさんのユニット?表現のひとつキッシン・モストリーについて話してもらっていいですか?サウンドクラウドで聴いた「地下鉄」という曲が俺は大好きで、確か初めてカズマロさんに連絡もらったとき、真っ先に聞いたのが「地下鉄」でした。アコースティックな演奏はコントラバスやブラシのようにも聞こえますが、打ち込み?PCやスマホでしか聞いたことがないので、ぜひレコードでも聞いてみたいですね。キッシン・モストリーには他の曲も存在するのでしょうか?


カズマロ:キッシン・モストリーはメンバーが僕ひとりのフォークロックバンドだ。すべての楽器を僕が演奏している。3曲しか録音しなかった。「庭の猫」「地下鉄」の2曲は、カセットテープにしてメイベルズの解散ライヴが終わったあとで配った。あと1曲「カリアティード」はLovin' CircleレーベルのコンピレーションCDに入っている。どちらもYouTubeで聴くことができる。91年から92年にかけて活動?したのだがまたやりたい気持ちもある。・・キッシン・モストリーの「地下鉄」は自分でもかなり気に入っている。音楽はもうこれでいいかな、と思ったりもした。・・そう、「庭の猫」「地下鉄」は1枚だけレコードになっている。ダブプレートにしたんだ。うちで聴くときはそれで聴いてる。今度聴かせる。・・このところ作る曲がバンド向きではないが、KMのために作曲してもいいな。バラッドメンの「防弾ガラスの街」を僕が聴いてシュウが「地下鉄」を聴いて知り合ったんだよな。


シュウ:そうでしたね。俺が連絡をもらって、確か仕事帰りの電車の中で「地下鉄」を聞いたんですよ。自宅に帰って、カミさんにその話をしたら「Maybelsの音源あるよ」っていうので聞かせてもらって。お互いのライブに行ったり、映画を一緒に見に行ったり、交流が始まった。


俺はカズマロさんと出会って、自分が好きだった文学や映画との付き合い方が変わってきたし、一所懸命読んだり観たりしていた頃の気持ちを取り戻した。俺が「何も起きない映画が好きだ」と伝えると、カズマロさんはアッバス・キアロスタミ監督の「黄桃の味」を俺に勧めてくれた。観てみたんだけど、俺の感想は「カズマロさんみたいな映画」だった。そういったコミュニケーションのひとつひとつが俺の音楽の作り方、詞の書き方に影響を与えている。

カズマロさんは自分が好きなものに素直で一所懸命で紳士だ。俺はその態度が好きなんですよ。「カリアティード」も最高です。


そんなカズマロさんの魅力が、今の所の最新音源、「アンカウンタブル・ブルース」にはたっぷり詰まっていると思うんですよ。だからできる限りたくさんの人に聞いてもらいたい。



カズマロ:「カリアティード」は締切りのある仕事だったので曲作りに少々手こずったが、けっきょくやりたいことをやることができた。ふたつしか連のない小曲だが、ある状況を表現することができた、と思っている。

状況、といえば僕はあれを思い出すんだ。「昼間っから中華料理店の隅でサケを飲んでいる」、というあれだ。シュウと出会ったばかりの頃、もう5年まえになる。僕は「歌詞を書いている」すぐれた友だちを得た、と思った。

僕の作った物について何か思うことがあれば、何らかの方法でそれを伝えてほしい。そこから対話が始まり、作物は新たな意味を与えられるだろうと思う。ぜひ僕に会いに来て欲しい。

シュウ:このインタビューで、誰かがカズマロさんの音楽や言葉に触れる切っ掛けになってくれればと心から思います。ライブに行くのはもちろん、レコードでも配信でもなんでも、とにかく触れてくれればいい。


ほんの一部でもカズマロさんの魅力が、いつもと違った角度で伝えられることが嬉しいです。少し長くなってしまったけど、最後まで読んでくれた皆さん、そしてカズマロさん、ありがとうございました。



吉田カズマロ /『アンカウンタブル・ブルース』 (ROSE 369X / Analog ALBUM)


🎵「アンカウンタブル・ブルース」配信
🎵
 KISSIN' MOSTRY / 「地下鉄」

🎵 KISSIN' MOSTRY / 「カリアティード」


吉田カズマロさんからの「おすすめのシングル3枚」


◆Good Day Sunshine/ Joe E. Young & The Tonics
...B面のLifetime of Lovin'は名曲です。


◆Paperback Writer / The Beatles

...B面のRainは名曲。


Ride into the Sun / The Velvet Underground

...VUの曲ではこれがいちばん好き。


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